高齢者の家庭内事故に注意
独立行政法人国民生活センター くらしの危険285号より
最近は、高齢者と呼ばれるようになる65歳以上の方にも、元気で活躍している人がたくさんいます。
しかし、現実に身体機能はだんだんと低下しており、思わぬ時に思わぬところでけがをするといった例も見られます。特に家庭内での事故が多くなっています。
具体的には、階段や脚立、ベッドからの転落、床や浴室などでの転倒により、打撲や骨折を負う例が多く見られます。また、やけども目立っています。
高齢の場合けがをすると重い症状になりやすく、治療にも時間がかかります。その後の生活の質を確保するためにも、事故の予防が大事です。
こんな事故が起きています
●階段・床での転倒・転落による骨折
ケース1. 階段の2段目で転倒し、臀部と後頭部を強打した。腰椎圧迫骨折と小脳に出血があり重症。(83歳 女性)
ケース2. トイレから廊下に出た時つまずいて転倒。左股関節骨折で重症。(86歳 女性)
●浴室での転倒・やけど・突然死
ケース3. 風呂に入っており、家人が15分おきに様子を見に行っていたが、しばらくしたところ、顔面がお湯につかり意識のない状態で発見された。死亡。(74歳 男性)
●屋根・屋外作業での転落事故
ケース4. 庭でびわの木にはしごをかけてチェーンソーで木を切っていて、誤って転落した。首の骨を折り重症。(78歳 男性)
●身の回りの生活用品での事故
ケース5. 家の居間でこたつ布団につまずいて仰向けに転倒。腰部を骨折し重症。(89歳 女性)
ケース6. 麦茶を沸かしたやかんを倒して下半身に浴びてやけどをした。熱傷で重症。(81歳 女性)
ケース7. 掃除機のコードにつまずいて転倒。胸部を骨折し重症。(67歳 女性)
●着衣着火
ケース8. ローソクの火が衣服に燃え移り着火、熱傷で死亡した。(71歳 女性)
高齢者の家庭内事故の特徴
・けがの内容で多いのは、打撲症・挫傷、刺傷・切傷、骨折、やけどです。特に骨折は20歳以上65歳未満の件数の2倍以上です。治療に長期間を要する重いけがでは骨折が1位です。
・けがの原因となった場所等をみると、階段がもっとも多く、次いで床、ベッド、浴室設備の順です。住宅設備での事故が多くなっています。
・事故のきっかけは、転倒と転落をあわせた割合が6割近くで、年齢が上がるにつれて多くなっています。階段や屋根などの高いところからの転落もありますが、立ち上がったり普通に床を歩いていての転倒が多いのも特徴です。
・一方、死亡の原因としてもっとも多かったのはやけどでした。熱い湯の入った浴槽に転落したり、着ている衣類に火がついたことによるものです。
事故を防ぐために
1.階段や床での転倒・転落事故を防止する
・「段差」をなくす工夫をしましょう。玄関では、段差を小さくするための式台などを置くとよいでしょう。
・階段、廊下、玄関、浴室などには「手すり」を設けましょう。
・階段、廊下、玄関などには「明るい照明」や「足元灯」をつけましょう。
・居室は整理整とんをし、床や階段などにつまずきそうな物を置かないようにしましょう。
・すべりやすい靴下やスリッパは、はかないようにしましょう。
2.浴室での溺死、やけどを防止する
・心臓などに負担をかけないように、家族が入浴した後やシャワーで給湯して浴室を暖めてから入浴し、また冬場は脱衣場も暖房して脱衣場と浴室の温度差を減らしましょう。
・給湯やシャワーの湯温が熱くなりすぎないようにしましょう。
3.屋根や脚立からの転落事故を防止する
・屋根や脚立、梯子を利用して高所でする作業はなるべく本職の人や若い人に頼みましょう。また、一人での作業は絶対にやめましょう。
4.衣類に着火する事故を防止する
・生地のそでやすそが広がった衣類は火がついても気づきにくいので注意をしましょう。火が燃え広がりにくい防炎性のパジャマ、エプロンなどを利用するのも効果的です。
5.窒息事故を防止する
・食事の際は、お茶や水を飲んで喉を湿らせてから少しずつ、ゆっくりよくかんで食べましょう。餅など粘りのある食品を食べる場合は小さく切りましょう。周りの人は、急に話しかけるなどしてあわてさせないように気をつけましょう。
6.もの選びの工夫
・高齢者向けの安全性の高いもの、使いやすく工夫されたユニバーサルデザインのものも上手に活用しましょう。
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