県内の活動紹介 〜地域や関係者の取組〜
「ご近所サロンde詐欺防止」事業によって被害を未然に防げた事例紹介
高齢者が消費者被害等に遭うのを防ぐため、広島県社会福祉協議会では、関係機関とネットワークを組みながら「ご近所サロンde詐欺防止」事業に力を入れています。平成26年度は、県内4市町社協(三原市・東広島市・安芸高田市・坂町)でモデル事業を実施しました。
消費者被害等の未然防止には、情報や知識を得ておくこと、誰かに相談することが大切です。そこで、身近で自然な交流の場である「ふれあいサロン」を拠点として、消費者被害に関する研修会やアンケートを行い、配布した「お頼りさんカード」に、気軽に相談できる人の名前と連絡先を記入するよう呼びかけました。
実際に、詐欺と思われる電話を受けたときにも、サロン研修会での啓発や「お頼りさん」づくりによって相談できる人がいたことで、被害を未然に防ぐことができた事例を紹介します。
◆三原市の事例
消費者被害防止をテーマにした、サロンでの第2回の研修会でのこと。
「前回の第1回の研修会で、皆さん、詐欺のいろんな手口を〇〇交番の吉田さん(仮名)から聞きましたよね。あれから“詐欺かな”と疑われるような電話や訪問はなかったですか?」と社協職員の高橋さん(仮名)が参加者に問いかけました。
ざわざわ・・・「まさに、あったんよ!」
70代後半一人暮らしの安子さん(仮名)が、手を挙げました。
「変な電話がかかってきたんよ」
サロン参加者は、「えっ!」と安子さんに注目。
安子さんはその時のことを思い出しながら、ちょっとまゆを寄せて、「『一真(孫の名前)よ-。風邪ひいとるんじゃけど・・・ゴホゴホ(咳払い)』と言われたんよ。じゃけぇ、『あんたの声は、一真(孫の名前)の声じゃあない!』と言って、すぐに電話を切ったんよ!この前の研修会でそういう手口があるって教えてもらったし、みんなで気をつけようや言うて話したけぇ、これじゃ!って、ピンと来て、すぐに断れたんよ」と、少し興奮気味に、みんなを見回しながら話してくれました。
その話を聞いたサロン参加者は、「研修会で聞いたけぇ断れたんじゃ。良かったねぇ」「ほんとに、いつ誰のところにそんな電話がかかってくるかわからんねぇ」「何かあったら今日みたいにサロンで言い合おうやぁ」「ほんまよ。誰も被害に遭わんようにね」と、自分ごとで考え、みんなで話し合いました。
◆安芸高田市の事例
「未払い金があるので、支払うように」身に覚えのない内容のメールが、携帯電話に送られてきた敏美さん(仮名)。
何度も読み返してみましたが、自分は知らない、関係ないと思う内容。
しかし、自信が無くなり不安になって、どうすればいいかわからなくなった時、目に入ったのは「お頼りさんカード」。サロンであった研修会で「なんか変じゃな、詐欺かもしれんな、と思うようなことがあったら、すぐ相談してよ」と言ってくれた“お頼りさん”の孝子さん(仮名)の顔が頭に浮かびました。
「そうじゃ!ちょっと話を聞いてもらおう」と、孝子さんに相談をしました。
すると孝子さんは、親身に聞いて、「敏美さん、怖い思いをしちゃったね。でも大丈夫よね。こんなメールは無視しとけばいいんよ!さっさと消そうや!」と言ってくれました。
その瞬間、敏美さんは、縮まって苦しくなっていた胸の奥が、ほっと緩んだように感じました。
孝子さんは「ちょっと携帯電話貸してみて。(携帯電話のボタンをあれこれ押しながら)え-っと・・・。」と、メールを削除しようとしてくれました。でも、操作がうまくできなかったため、結局二人で近所の携帯ショップに行き、店員にそのメールを削除してもらいました。
「孝子さん、本当にありがとうねぇ」「何言うんね。また、何かあったら絶対にすぐ言うてぇよ」
二人でにっこりほほえみました。
※写真は「ご近所サロンde詐欺防止」での様子・事例内容とは直接関係ありません
※事例は、広島県社会福祉協議会「平成26年度高齢者等の消費者被害防止モデル事業報告書」より引用
高齢者の交流の場である「ふれあいサロン」等を拠点に、啓発活動や関係機関との連携、近隣住民で相談しあえる関係づくりをすることで、高齢者の消費者被害の未然防止、拡大防止となり、誰もが安心して暮らせる地域づくりにつながることを期待しています。