県内の活動紹介 〜地域や関係者の取組〜
今回は、広島県社会福祉協議会事務局次長(兼)地域福祉課長であり、消費者ネット広島の理事でもある上田正之さんに高齢者の消費者被害についての思いを綴っていただきました。
広島県社会福祉協議会は、市区町社会福祉協議会や関係機関、団体とともに、誰もがどんな時にでも安心して暮らせるまちづくりに取り組んでいらっしゃいます。
「高齢者の消費者被害について」
広島県社会福祉協議会事務局次長(兼)地域福祉課長 上田正之さん
旧口和町社会福祉協議会時代の忘れられないエピソードがあります。
ある日,事務所のヘルパーが一人暮らしの花子おばあちゃん(仮名)の家を訪問すると,健康食品の山。「花子さん,どうしたん」と尋ねると「近頃ずっと体がしんどい。この前訪ねてきた見知らぬ薬屋さんが,これを飲んだら元気になると親身に話を聞いてくれた。私も元気になりたいので買ったのよ」とのこと。健康食品は月賦(60か月払い)で総額が324,000円。「一日180円で元気になるよ」と言われつい契約してしまったとのこと。総額の話をすると花子さんはびっくりして,それからクーリング・オフを行うこととし,すでに封を切っていた一部商品以外すべて解約しました。
花子さんは以前にも高額の訪問販売商品に手をだし,電話代が払えなくなったり,電気代を滞納し電気が止められるなど,生活そのものが成り立たなくなったことがあり,注意をしていた中でのことでした。
見知らぬ人であっても親切にしなさいとか,優しくしなさいといった素敵な日本文化で育った高齢者。その親切心や断りきれないやさしさ,また,孤独感や弱りはじめた体への不安がターゲットになる典型的なトラブルです。同じ人が何度も被害にあうような例がいくつかありました。複数の同居家族がいながら被害にあう人もいましたが,圧倒的に多いのは独居や高齢者のみの世帯でした。
消費者被害に対して行政や関係機関も,広報啓発や,集まりの場などで情報提供していますが,高齢者がいざその場面に遭遇した時,適切に自己判断して断ることはとても難しいことです。ましてや,消費者被害情報がほとんど届かない,外との交流が少ない人などは,上手く断れず、被害に遭ってしまうという現状があります。
では,どうすればいいのでしょうか。消費者被害に関して身近な人からの徹底した口コミと,こういった場面に遭遇したとき,気兼ねなく相談できる人(仲の良い隣人)を作ることです。そしてそういったつながりづくりを行政や関係機関が協働して作り上げていくことです。
数十世帯単位での顔の見える範囲で,隣人がつながり,地域の関係者(自治会,民生委員等)がつながり,それをサポートする専門職(行政,社協,警察,消費者ネット,包括支援センター等々)がつながる小地域単位での仕組みづくりこそ,最善で,しかも最短の時間で効果の出る方法だと思います。